こどもの病気
はじめに
当院では正確な診断をするために内視鏡で耳・鼻・のどを確認しています。これはお子さんにこそ重要であると考えます。実際の状態や検査結果をモニターに表示して、今後の治療方針や予想される経過などについて、ご家族の方にわかりやすく説明します。
お子さんの診察方法について
小児は鼻処置が大事
お子さんの鼻水はいろいろな病気を引き起こします。中耳炎の原因になったり、気管支炎や喘息のきっかけになったりもします。そのため根気よく鼻の処置を行い、鼻の状態をよくすることが重要です。
当院では、しっかり鼻水を吸引できるように、ガラス製で先端が丸くなっているオリーブ管で吸引した後、さらに先が細いシリコン製のアマツ式吸引管という柔らかい管で鼻の奥までしっかりと吸引します。
アマツ式吸引管
小児の滲出性中耳炎について
滲出性中耳炎とは、鼓膜の内側(鼓室)に液体が溜まっている病態です。
耳の痛みはありませんが聞こえにくくなったり、耳の詰まり感(耳閉感)の症状がでます。
お子さんの場合、ずっと聞こえにくいにもかかわらず、その状態になれてしまい、長い間気づかれないことがあります。
内視鏡で鼓膜所見をみてティンパノメトリーで鼓膜の動きを確認します。
- 鼓膜の内側(鼓室)に液体が溜まっている例
- 液体の貯留を示すティンパノグラム
治療は、鼻症状を軽減することがとても重要です。まずは鼻処置やネブライザーや飲み薬などの治療行います。3ヶ月程度これらの治療を行っても改善しない場合は、鼓膜チューブ(写真)などの外科的な治療を検討する必要があります。
鼓膜チューブ留置後の鼓膜、色調が改善している
「きこえ」だけではなく、中耳の発育が重要
滲出性中耳炎は、きこえを悪くするだけではなく、中耳の発育を阻害します。
中耳発育は9歳前後でほぼ完了しますので、それまでに中耳を良い状態に整えることが重要です。
小児のアレルギー性鼻炎について
アレルギー性鼻炎の患者さんが増加しています。
成人では50%近い罹患率になっており、子どもでも、小学校6年生では33%と20年前の2倍近くになっています。学業や睡眠に支障を来すため、適切な対応が必要です。また小児では鼻出血を繰り返す原因がアレルギー性鼻炎の場合もあります。
診断
内視鏡検査
鼻汁の性状や鼻づまりの程度を調べます。
血液検査
アレルギーの原因物質や血中の好酸球を調べます。採血が難しい小児の場合は、指先から極細の針を一瞬刺して血液を1cc採取し、20分で結果がわかる検査キッド(イムノキャップラピッド)があります。
治療
- アレルギーの原因の除去
- 鼻処置やネブライザー治療
- 抗ヒスタミン薬は点鼻薬を重症度に応じて処方します。
- スギ、ダニが原因の場合は舌下免疫治療も選択肢になります。
小児の睡眠時無呼吸・いびきについて
小児の睡眠時無呼吸は、
- 顎顔面骨発達の低形成
- 深睡眠時の成長ホルモン分泌が安定しないことによる発育障害
- 睡眠不足による、知能・集中力・記憶力の低下に伴う学習障害
- それによる青年期の学力低下
などをもたらすことが知られています。小児期の睡眠時無呼吸やイビキは多くの場合、扁桃肥大とアデノイド肥大による閉塞性のものですので、手術治療によって改善することがほとんどです。扁桃摘出術前後の写真を以下に示します。
このような症状があればご相談下さい。
寝ている時に
- 大きなイビキを繰り返す
- 呼吸が数秒止まる
- 眠りが浅く、何度も起きる
- 座らないと眠れない
- いつもうつむきで寝ている
- 陥没呼吸(呼吸時に胸がへこむ)
- 夜尿が多い
日常生活で
- 口呼吸である
- 寝起きが悪い
- 日中の眠気がある
- 日中に居眠りする
- 毎日昼寝する
- 集中力が低下している
OSA-18問診票で合計50点を超えるようでしたら睡眠時のイビキや無呼吸に注意して観察してみてください。
抗菌薬の適正使用
耳鼻科の病気では、副鼻腔炎や扁桃炎など細菌感染も多く、抗菌薬を使用する場面も多くあります。しかし近年は、抗菌薬が乱用されることで、抗菌薬の効きにくい菌が増加してきており、抗菌薬を適正に使用することが求められています。
当院は、迅速検査やファイバー検査を用いて細菌が原因であり、抗菌薬が有効であるような症例に対してのみ処方するようにしております。感冒(風邪)に対してなど、不必要な抗菌薬の処方はしないように心がけています。